こんな世界なくなってしまえ!

こんな世界なくなってしまえ!

あたしは叫びたかった。そんな思いをしているのはあたしだけじゃないはずだ。

今朝、あたしは満員電車に閉じ込められてしまった。冗談みたいにギュウギュウに詰め込まれた人間たちは、みんな苦しそうな顔で我慢していた。こんな思いをしてまで通勤しなきゃいけないなんて、毎日げんなりしてしまう。

女性の声でアナウンスが流れる。

「前を走る電車のドアに荷物が引き込まれた影響で、この電車も遅れております」

なにが遅れております、だ!どっかの知らない馬鹿のせいで、あたしは知らない禿げたおっさんと密着する羽目になっている。どっかの知らない馬鹿のせいで、あたしは不愉快な思いをさせられる。酸素容量も限られているのに、苦しいったらありゃしない。

毎日4光年の距離をあたしたち地球人は通う。爆発的に進歩した地球の技術は宇宙に軽々と進出できるようになった。初めて宇宙生物にあった時は感動的だったと聴く。けれど、喜びは一瞬で無に帰した。地球人が初めてあった宇宙生物は考えられないほど高い技術を持っていた。

私たちがようやく達成した宇宙科学を、ザリガニみたいな見た目の彼らは2億年前に完成させていた。

ザリガニは地球のために一肌脱ぐと言い、多くのものを与えてくれた。この空飛ぶ電車もその一つだ。4光年もの距離をたった90分で進むのだ。彼らは協力的で優しかった。彼らと出会ってからの10年間は目まぐるしい発展を遂げた。

しかし、うまい話はないし異星ザリガニもお人好しではなかった。

地球にはザリガニの技術を支えるリソースがそれほど存在しなかった。彼らは知っていた。ザリガニがもたらした技術に不可欠なケリョンヌンサンが地球には全然ないことを。既に地球の文明を維持するにはザリガニの技術とケリョンヌンサンが不可欠だった。過去に戻ることなんてできやしない。

だからあたしたちはザリガニの星に毎日通い働く。働けばいいことがあると信じて。

安い給料でケリョンヌンサンを得るために、今日の晩御飯を食べるために、精一杯働くのだ。

ザリガニは数だけが多い人類のことをドリュサリマンニルと呼び、奴隷のように扱っている。

でも、そんなこと知ったこっちゃない。地球では生きていけないのだ。

電車の酸素が薄れて、意識が遠のく。

こんな世界なくなってしまえ!地球だけで完結すればよかったのに。

暗闇に浮かぶ銀河が遠くで瞬いた。

電車はまだ動かない。